慰謝料請求
目次
- 1. 離婚についての慰謝料とは
- 2. 不貞行為(浮気の相手方)に対する慰謝料
- 3. 慰謝料の請求方法
- 4. 慰謝料算定にあたって考慮するもの
- 5. 慰謝料の具体的な計算方法
離婚についての慰謝料とは
慰謝料は、精神的苦痛を金銭によって賠償するという性質のものです。
一般的には、『離婚』と聞くと、慰謝料という言葉が頭をよぎりますが、
実務上・実態としては、当然に全てのケースで認められるものではなく、限定的に認められるものであり、また簡単には認められませんし、欧米諸国に比べるとその額は少ないケースが多いものです。
ワイドショーやスポーツ新聞等では、
『芸能人やスポーツ選手の○○さんが妻に浮気の慰謝料として慰謝料○億円』
といったような記事をよく目に致しますが、これは、特別なケースであって決して一般的ではございません。
金額はもちろんですが、慰謝料請求自体も同様です。
慰謝料が認めれれる主なケースと致しましては、
・不貞行為
・悪意の遺棄(家庭を捨ててかえりみないようなケースです)
・DV(同居関係にある配偶者や内縁関係の間で起こる家庭内暴力、ドメスティックバイオレンスの略称)
・セックスレス
などではないでしょうか。
さらには、これらの中でも認められるか否かは個々案件によりますし、また、慰謝料の額については、明確な基準や相場はございません。
一般的には、100万円・150万円・200万円・300万円といった額で請求されるケースが多いのですが、具体的な請求の根拠を明確にしなければ認められるものではないですし、もちろん、しかるべき理由のない請求であればお支払いいただく必要はございません。
『慰謝料請求を考えているけど、方法や金額が分からない。』
『突然、慰謝料請求の内容証明郵便が届いた。』
『浮気相手だけに慰謝料の請求をしたいので相談したい。』
など、離婚の慰謝料についてお困りの方は、法律の専門家へご相談いただくことがより良い方法だと考えます。
不貞行為(浮気の相手方)に対する慰謝料
例えば、夫が未婚の女性と浮気をし、夫婦関係が破たんに至った場合、法律上は、夫と当該女性は、共同不法行為者として妻に対して連帯して不法行為に基づく損害賠償責任を負います。
つまり、このケースでは、
妻は夫に対しても浮気相手の女性に対しても慰謝料を請求することが可能だといえます。
通常、連帯責任を負う場合には、どちらに請求しても、またどちらか一方のみに請求しても問題はございませんが、離婚における不貞行為に対する慰謝料請求は、このケースで申し上げれば、夫に請求し、さらに相手方の女性に対しても請求するというのが原理原則でしょう。
※但し、相手方の女性にのみ請求することを妨げる趣旨ではございません。
これは、夫を免責するとするならば、婚姻関係の破綻が客観的に不明確となり、そうすれば、相手方の女性の行為に対しての不法行為責任を追及するのは難しくなる、若しくは離婚という観点からの慰謝料請求は認められにくいという考え方によるものでしょう。
簡単に申し上げますと、
①浮気によって婚姻関係が破綻
↓
②有責配偶者(浮気をした配偶者)に慰謝料請求
↓
③共同不法行為者(浮気の相手方)にも慰謝料請求
というような流れとなります。(概要・イメージです)
夫を許して離婚はせず、しかしながら、浮気相手には離婚するほどの精神的損害を被ったのでその分を賠償して欲しい。という場合には、慰謝料の金額が低くなる場合がございます。
慰謝料の額については、婚姻期間や不貞行為の期間、不貞行為に至った経緯、相手方が既婚者であることを知っていたのか否か等、様々な条件を総合勘案し決定されるのが一般的です。
明確な相場はございませんが、
『浮気に対する慰謝料請求を考えている。』
『夫と浮気した相手の女性に対して慰謝料を請求したい。』
『お互いに不倫関係なので慰謝料請求ができるのか困っている。』
『私たちのケースでは慰謝料の金額が概算でどれくらいになるのか知りたい。』
など、離婚や浮気に関する慰謝料(金額も含めて)についてご不明な点がございましたら、おひとりでお悩みになられずに、離婚問題の専門家までご相談されることがより良い方法でしょう。
慰謝料の請求方法
慰謝料請求は、離婚の話し合いの中で同時に行っていただく場合には、養育費や財産分与と同様に、支払いの確保のため公正証書や調停調書等を作成しておかれるのが最善です。
慰謝料請求は、原則としてその損害及び加害者を知ったときから3年以内に請求する必要があります。
一旦確定すれば、一般債権として10年の消滅時効にかかります。
また、離婚の話し合いとは別途慰謝料のみの請求を行って頂く場合には、まずは、裁判外で内容証明郵便等を用いて請求されるのが一般的です。
相手方が応じない、または、話し合いがまとまらない場合には、調停や訴訟の場で話し合いを行うこととなります。
管轄の裁判所に関しては、一般的には、離婚される前段階においては、家事事件として家庭裁判所での調停を、離婚後は通常の民事事件として地方裁判所へ申し立てることとなります。
内容証明郵便の出し方や、調停・訴訟等のお手続きの流れ等につきましては、いつでもお気軽に弊社までご相談いただければ幸いです。
配偶者及び不倫の相手方に対して慰謝料を請求する場合には、
①同時に請求を行う
②別々に請求する
いずれかによって、また、個々案件によってお手続きが異なりますので、どのお手続きにどういった専門家の関与がより良いのか等も含めまして、親身になって対応させていただいております。ご安心の上、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。
慰謝料について明確な相場はございません。
なぜなら、個人の心の中までは誰も見ることはできないからです。
根拠が曖昧なまま、300万円や500万円といった請求金額を目にすることもございますが、離婚の専門家であれば、根拠のない数字は提示しません。
請求される側もされた側も、提示された金額の根拠をご確認下さい。
明確な回答が示されなければ、そのままの数字で協議を進める必要はないでしょう。
慰謝料算定にあたって考慮するもの
以下が主な項目となります。
①有責性
②精神的・肉体的苦痛の度合い
③婚姻期間
④未成年者の子の有無
⑤有責配偶者の資力
⑥慰謝料を受け取る配偶者の資力
⑦財産分与等経済的充足度
調停や裁判では上記項目を精査し判断することとなりますが、協議離婚においては当事者間で自由に決定することが可能です。
しかし、たとえ希望通りに合意できた場合でも、現実的には、支払う側の資力が大きな問題となりますので、確実に支払ってもらえる金額なのかどうか等について十分に熟慮したうえで決定するべきです。
なお、慰謝料請求は、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求となりますので、その行為及び相手方を知ったとき(=一般的には離婚時)から3年間となります。
慰謝料については、個々案件により内容も大きく異なり大変難しく複雑な問題です。
おひとりでお悩みになられずに、今後のより良いお進め方等ご不明な点がございましたら、まずは一度ご相談いただけますと幸いです。
親身になって対応させて頂きます。
慰謝料の具体的な計算方法
離婚の慰謝料の金額について明確な基準を設けるため、「婚姻年数」及び「有責性の度合い」に応じて作成された算定基準に関する表がございますのでご紹介させていただきます。
離婚慰謝料の相場に関する資料としてご参照下さい。
離婚慰謝料の算定基準 (単位:万円)
婚姻期間 | 1年未満 | 1~3年 | 3~10年 | 10~20年 | 20年以上 |
責任軽度 | 100 | 200 | 300 | 400 | 500 |
責任中度 | 200 | 300 | 500 | 600 | 800 |
責任重度 | 300 | 500 | 700 | 900 | 1000 |
※この表はあくまで「婚姻期間」「有責性の度合い」を基準とした表であり、その他の要因は含まれていません。あくまでも離婚慰謝料の相場に関する一資料に過ぎませんのでご留意の上ご確認ください。
【離婚原因に対する慰謝料の算定方法】
離婚原因となる事実から受ける苦痛に対する慰謝料については、「離婚を求める事由」(民法770条)を基準として以下のように考えることが可能です。
※法律で定められた金額ではございませんので、必ず認められるものではございません。
<不貞行為:120万~240万円以下>
不貞回数、期間、不貞の相手方に子供ができた、不貞を働いた相手から性病をうつされた、精神的苦痛(心労による流産、自殺未遂、ノイローゼなど)、不貞に至った経緯などを考慮の上、基準額120万円についてその内容により増額されます。
<悪意の遺棄:60万~240万以下>
基準額を100万円として、以下の事由を考慮して増減されます。
○同居義務違反に関する事情
別居期間、別居に至った経緯、別居状態解消の努力や精神的苦痛等の事情を考慮して増減します。
○協力・扶養義務違反
生活費を入れない、借金などの経済的責任の放棄等の事情を考慮して増減します。
<精神的虐待・暴力:60万~120万円以下>
精神的虐待・暴力の状態、それに至った経緯、継続性、回数、それによる苦痛の程度、怪我や障害・後遺症の程度などを考慮して増減します。
【離婚そのものに対する慰謝料の算定方法】
婚姻関係の解消から生じる精神的苦痛に対して支払われる性質のものです。基本となる金額を120万円と設定し、次のような数式によって算定する考え方です。
※法律で定められた金額ではございませんので、必ず認められるものではございません。
<計算式>
離婚そのものに対する慰謝料
=基本となる金額120万円+相手の年収の3%×実質的婚姻年数×有責度×調整係数
※実質的婚姻年数
婚姻期間が20年以上の場合は20として計算します。別居期間も婚姻年数に含まれます。
※有責度
相手が一方的に悪いときは「1」、自分にもかなり非があるというなら、その度合いによって「0.2~0.4」などのように決定します。
お互いに同程度の場合は「0」として計算しますので、慰謝料は0円ということになります。
※調整係数
0.7~1.3の間で、離婚後の生活の困難性によって事情を勘案していくものです。
例えば、手に職を持ち、夫と同程度の収入がある女性なら0.7で計算し、全く職業経験がない女性の場合には1.3で計算するといった形です。
以上が慰謝料の計算に関する基準等となりますが、ひとつの参考資料に過ぎません。
したがいまして、法的に認められる具体的な慰謝料の金額につきましては、その他様々な事情等を考慮し算定していく必要がございます。